2008年10月07日

番外1 アストリア

 ゲフェンの外れにある『ADAGIO』の本拠地、件マスターの自宅。
 珍しく・・・というわけでもないが、その日は朝からギルドメンバー全員が揃っていた。
 朝食の仕度をしているマスター・天篠 蘭華と、その手伝いをしているイリヤ=クインシー。
 さらに、たまには自分でと名乗りを上げてコーヒーを淹れているサブマスター・天篠 綾兎。
 朝から厨房は賑やかでほんの少しのおしゃべりをしながら調理を楽しんでいた。

「アストはまだ寝ているのかしら?」
「これが終われば私が起こして来るよ」
「アストは寝起きよくないからなぁ・・・俺が行く。」
「そおかい?じゃぁ、お願いしようかな」

 朝食をワゴンでリビングに運び終わる頃、イリヤがアストリア=リスクールの首根っこを掴みあげつれてきた。

「おはよう。今日は紅茶とコーヒー、どっちがいいかしら?」
「・・・こーひー・・・」

 まだ半分寝ぼけているらしいアストに綾兎がコーヒーを淹れたマグカップを渡す。
 つい最近このギルドに入ったアストは一人旅が長かった為かギルドの生活バランスがまだ身に付いていなかった。

 そんなある日のこと。
 そんなアストを連れ立って屋敷から少し離れたところにある草原に綾兎は来ていた。
 目当ては薬草とハーブの類。
 製薬業務が主な自分の妻にとちょっとした暇があれば採取に来る。

「ここはよく蘭華がハーブとかとりにくる場所でね。採ってきてってお願いされたらここにきて採取したらいいよ。」
「ふぅん・・・マスターがね・・・」

 ギルド自体になれたとは言っても、人に対する接し方はまだまだ慣れないアストは正直、どうしたらいいか分からなかった。
 マスター・蘭華に怪我をして倒れていた所を助けてもらい、介抱され、なんとなく。といった形でギルドに入ったが、今までが一匹狼みたいな生活だった為か優しく、温かく接されるとどうしていいかわからず、ぶっきらぼうな受け答えしか出来なくなる。
 そんな自分に嫌気がさしていた。

「アスト、気にしない方がいい。昔の私もそうだった。」
「ぇ・・・?」
「君は自分の嫌気がさしてるんだろう?」

 アストは目を見開いた。
 何も言っていないのにそれを理解してもらえたから。

「私も、こうなるまでに、時間をかけた。周りの人を悲しませた。どうしてこんなことをしてしまったんだろう。って後悔もしたよ。でも、それを乗り越えて、今の私がいる。全部話すとながくなるから話さないよ?でもね、君は昔の私に似ているから。君はまだ、自分に嫌気がさすだけで済んでる。だから、間に合うよ。誰かを傷つけてしまう前に、気付けばいいんだ。」

 そういって微笑む綾兎にアストは無言で頷いた。
 綾兎の言葉で、ほんの少しだけ、楽になれた気がした。
 帰ったら言ってみようと思った。

『ただいま』

 と・・・。
 きっと、それだけでも、自分の中で何かが変わる気がするから。
 だから、今までやらなかったことを少しずつやってみよう。
 そう、心に決めたアストだった。

「おや・・・珍しすぎるものが落ちてますね・・・いや、捨てられているのかな・・・?」

 綾兎の不思議そうな声に釣られてアストも綾兎のいる場所に歩み寄ってみる。
 そこにあった・・・いや、確かに落ちていたのは赤ん坊だった。

「うーん・・・こんな郊外に捨て子とは・・・」

 綾兎は言葉とは裏腹に迷うことなくその赤ん坊を抱き上げた。
 その赤ん坊の顔を見てアストは驚愕した。

「あ、綾兎さん!早く医者に!」
「うん。蘭華のトコに連れて行ってみよう。」

 綾兎とアストはそれまでに摘みあげておいた薬草類を持ち来た時とは反対に急いで家路に付いた。

 自宅に着くと、綾兎は蘭華を呼び赤ん坊を預けた。
 蘭華も最初こそ驚いたもののイリヤに二言三言伝えると、大丈夫と微笑んだ。

「冷え込んでるだけだから少しあったかくしてあげればいいわ。それにしても、酷いわね・・・わざわざ郊外に捨てるなんて・・・」

 蘭華は赤ん坊を連れてイリヤがつけてくれた暖炉の前に座り赤ん坊を抱きしめた。
 
「乳離れはしてるから大丈夫かな・・・?イリヤ、朝の残りのスープ、持ってきて。」
「あぁ。」

 アストは蘭華の隣に座ると赤ん坊を覗き込む。

「心配しなくてもいいわ。夜には元気になるから。」
 
 そういわれてコクリと頷くとアストはフと、思い出したかのように決意していた言葉を言った。

「ただいま・・・」

 蘭華もイリヤも、一緒に行っていた綾兎でさえも驚いて目を見開いた。

「・・・おかえり」

 いち早く復活を遂げた蘭華は柔らかく微笑んだ。
 それを見たアストは照れて俯いたが、赤ん坊の身じろぐような声を聞いて再び赤ん坊を覗き込んだ。

「もう大丈夫。」

 イリヤが持ってきてくれたスープを蘭華はゆっくりと赤ん坊に飲ませる。
 そんな光景を、アストはここにきて初めて見せた微笑みで見つめていた。

 この赤ん坊が後のティオ。
 ギルドメンバーから愛情を一身に受けて育っていく。
 それはまた今度のお話。

〜あとがき〜
 番外編でしかもアストのお話でした。
 要は彼が昔はひねくれていたってことを書きたかっただけw
 ほんとはティオをメインにしようかなって思ったんですが、無性に彼を書きたくなったんですよ。
 本編も書かなくてはならないのですが、どうしても、書いておきたかったです。
 もう少し文才があれば表現力もあったのでしょうが・・・書きたかったことが伝わっていたら嬉しく思います。
 では、海星でした
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posted by 姉 at 12:56| Comment(1) | TrackBack(0) | 小説番外編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
十分文才があると思う〜

正直読んでて物語に入り込んだw

がんばって書き続けてくださいね
Posted by 零 at 2008年10月08日 00:29
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