2008年06月16日

第6話その1 朝の会話

 月明かりが照らし出している天篠邸の庭。
 そこにADAGIO、マスターの天篠蘭華が佇んでいる。

 時折月を見上げる表情は憂いを帯びていた。
 そんな彼女を今の窓から明かりも灯さずに見つめているのは彼女の夫、天篠綾兎とギルドメンバー・イリヤ=クインシー。
 この3人の過去は、結して、明るいものとは言えない。

「あいつ・・・まだ気にしてるのか・・・?」
「えぇ・・・私たちだって・・・気にしてないと言えば、嘘に・・・なりませんか・・・?」

 綾兎、イリヤの二人が話していると、気が済んだのかどうかは分からないが、蘭華が屋敷内に戻ろうと歩を進め始めた。

「部屋に戻ろう。蘭華が怪しんでしまう。」
「分かっています。おやすみなさい。」

 簡単な挨拶を交わし、2人は部屋に戻る。
 綾兎がベッドにもぐりこみ、少しすると、部屋の扉が静かに開き、蘭華が入ってくる。
 ベッドの近くまで来ると、綾兎が眠っていると思っている蘭華は、綾兎に向け、静かにつぶやいた。

「ごめんなさい」

と。
 それを聞いた綾兎は何も言えず、そのまま狸寝入りを通し、蘭華がベッドに入ってくると、寝ぼけたフリをして、そのまま腕に抱きこんだ。


 翌朝。
 一番早起きなのはこの家で食事を毎日作り続けている蘭華だ。
 その次が綾兎、イリヤに続き、ブレア、ティオ、アストリアと続いていたのだが、食事の用意をしていた蘭華にふと、声が掛けられた。

「手伝うことはありませんか?」

 昨日仲間になったばかりのアリスフィア=クルーニーだった。

「まだ眠っててもいいのよ?」
「いえ、緊張して眠れなかったのもあるんです。こんな風にギルドに入るときがくるなんて思ってもなかったので・・・」
「あらあら。じゃぁ、少し飲み物を出しましょうか。」
「あ、食事の仕度は・・・?」
「もう、煮込みを待つだけよ。」

 アリスを促しテーブルに着くとなぜかあらかじめ用意されていたコーヒーをカップに注いだ蘭華。
 カップを一つアリスに渡し、自らはコーヒーを一口含んだ。

「ミルクをお砂糖はご自由にどうぞ。」
「はぁ・・・」
「朝はいつもこうしてコーヒーから始めるの。だから朝起きたら必ず最初にコーヒーを作っておくの。」

 アリスに対してニッコリと微笑み、また一口、コーヒーを含む。
 アリスも適量のミルクと砂糖を入れ、かき混ぜて一口含み、飲み込んだ。
 まるで母と一緒にいるみたいだ。なんて思ったのはアリスの中でだけの内緒の思いだった。
 少しすると、蘭華は再び厨房に戻り食事を並べる準備を始めた。それにあわせるかのように綾兎、イリヤといつもの順番で起き出して来た。

「ん?アリス、早いな。」
「今日はたまたまです」

 イリヤの声に苦笑を浮かべながらこたえるアリス。
 綾兎に「おはよう」と声をかけられ、「おはようございます」と返すと微笑をさらに返してくれた。

「コーヒー、おかわりは?」
「あ、お願いします。」
「俺もいつものでいい」
「俺にもチョーダイ」

 扉を見ると普段は一番最後まで起きてこないアストリア=リスクールがいた。その隣にはまだ目をコシコシと擦って眠そうにしているティオの姿もあった。

「蘭華、ミルクあっためてください。ティオが起きてきましたよ。」

 ティオの姿を確認した綾兎が、厨房にいる蘭華に声をかけると厨房の方から「はーい」と返事がくる。
 アストがティオを抱き上げ、自分の席の隣に座らせる。
 少し他の椅子と作りが違うから、ティオ専用の椅子であることが分かる。

「珍しいね、アスト」
「今日、ラース、くんだろ?」
「えぇ、そうよ。」

 厨房からワゴンに料理を載せて運んでくる蘭華に、みんなの視線が集まる。

「今日はロールパンにスクランブルエッグとベーコン、シーフードサラダよ。スープは昨日イリヤが取ってきたかぼちゃで作ったのよ。」

 皆に配り、蘭華も席につく。

「アマツの風習でね。皆揃ったら『いただきます』って手を合わせて言ってね?」
「はい。わかりました」
『いただきます』

 朝日もようやっと昇りきったところで皆で朝食をとる。
 アリスにとってはこんなに朝早くの朝食は初めてで、これからのことが少し不安になった。

「ラースが来るのが今日だったか・・・騎士団依頼ですっかり忘れてた・・・」
「あぁ。あいつは忘れるなーって怒り出すだろうがな。」

 アリスにとって、少しだけ忙しい1日が始まった。



〜あとがき〜
 ながすぎるので、その1とかってわけることにしました。
 早く新キャラを出したくてうずうずしてます☆
 
 ちなみに姉は年齢にそぐわないショタキャラとかに異常な萌えを感じてしまいます。(変人
 新キャラもそんな感じの男なので苦手なひといたらごめんなさい。
 ではでは、感想誤字脱字報告、歓迎の上お待ちしております☆
posted by 姉 at 21:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説本編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/100741524

この記事へのトラックバック
ファン
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。